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二人はすれ違う女官らに話しかける。
だが女官達は皆、どこかへ急いで行ってしまった。
人の通らない廊下で、ハッと二人はあることに気付き、顔を見合わせた。
「な…なぁ菖韋。お前今道に迷ってる…?」
「…まさか。悠咏樣は迷ってませんよね?」
「………。」
その場で固まった二人の後ろから声がした。
「あの…。何してるんですか?」
振り向いた二人は、ほぉと声の主の姿に一瞬、心を奪われた。
声の主は同じ齢くらいの少女であった。
菖韋は疑問を感じた。
(ただの女官か…?)
少女は普通で言う美人だが、持つ雰囲気からして何かがズバ抜けているのを菖韋は感じた…。
悠咏は菖韋とはまた違い、女の迫力に驚いた。
なんとも凛々しい立ち居振る舞いなのか。
教養はともかく、内面の力強さが滲み出ている…気がする。
「あの…どうかされたんですか…?」
自分を見て硬直した二人を見た少女は、不思議がって声を再度かけた。
二人はハッとした。
(こ、このいい歳になってから呆けるなんて…。)
二人は顔を見合わせ、同じことを考えていた。
「あまり見たことの無い城官ですね。どちらへ行かれるのですか?」
女が問う。
「えぇ。実は、上格の女官に聞きたいことがあるのですが、ここへ来たら女官は皆、上格女官の場所を聞いても、慌ててどこかへ行ってしまい…、立ち尽くしておりました…。」
菖韋が淡々と状況説明をした。
女は苦笑いをした。
「ふふ、下の女官らは皆、ある上格女官の指導講義へ行ったのでしょう。」
「そうだったのか!では今、この宮には衛兵と少数の女官しかおらんのだな?」
女は微笑み頷いた。
「そうです。
それで、よろしければ私が上格女官の元へご案内しましょうか?私の会いたい方もそこにいますし。」
その言葉に悠咏の目が輝いた。
「おぉ!それは嬉しいお言葉!よろしく頼みます。」
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