27人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな二人の会話を聞いて、菖韋は眉をひそめた。
(他の女官が講義に行ったというのに、ここに居ると言うことは、この女性はまず下格の女官では無い。
だからと言って、上格の女官だとしても若すぎる…。
歳も私達と近いように見えるが…?)
菖韋のひそめていた眉が、みるみる深い眉間のシワを作り出す。
そして、菖韋の頭をよぎった別の疑問がもう一つ。
(…なぜ悠咏様は、正体もなんにも明かさない女性を丸っきり疑わないのだ…?)
菖韋はそんな悠咏の心を理解できなかった。
「おい菖韋ぃ!!置いてかれたくなければ早くこいよっ!迷子の迷子のおまわりさんになるぞ一?」
菖韋から少し離れた廊下で、ちゃらんぽらんなことを言いながら、悠咏は少女と歩いていった。
(迷子のおまわりさんって何だよ!?トンチンカン悠咏様めが!)
作った眉間のシワを解かないまま、菖韋は廊下を駆け出した。
同じ頃、風華付きの上格女官・萠喜(めき)は、さきほど届けられた国王からの書状を読んでいた。
『私が許す。』
だけって…。
なにがなんだか分からない…。
萠喜は溜息をついた。
全く理解不能である。
「あら?萠喜どうしたの~?父上の文にはなんて書いてあった~?」
自室から出てきた風華は、差し出された萠喜の手に握られる手紙に目を落とした。
数秒、風華の思考が止まる。
「えぇと…、父上は何に対して許すんでしょうね~?
ちょっと謎ですね~。」
風華は少し笑いながら文を返した。
そう、父・晃眞はいつもこうなのだ。理解しがたい短い言葉を送ってくる。
だが、その言葉の意味はいつも後々わかることになる。
なのでわかる間、言葉の意味を必死に解読しようと、文を読んだ相手は文字と奮闘しなければならない。
「う~ん?この文の短さは、結構早くに答えがわかるんじゃないかな~。」
娘二人はいつものことなので、学習して大体は時の予測がつくようになった。
その時、部屋に向かって女官の声がした。
「萠喜様、朱華皇女様が御用とのことですが…」
(は?………私?)
萠喜は耳を疑った。
そして女官の話が途切れるのを待たずに返事をした。
「わかりました。ではすぐに室に行きますので、お茶の支度を…。」
「あ…いえ萠喜様、朱華皇女様は上室でお待ちになると申され、今はそちらに…。」
((ーーなぜ室ではなく上室へ?))
最初のコメントを投稿しよう!