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「それで、私に何のご用件…いや、ここへの出入りの許可は頂いてませんよね?」
萠喜は少し離れた椅子に座る朱華をチラッと見やった。
皇女の住まうこの宮は、王と皇女本人の許可を得れば、客室までなら案内できる。
…朱華が連れて来たのだ。まず皇女の許可は出ているはず…。
「それが…、主上に許可を申し出たら、少し黙り込まれ、
『余はいいが、年頃な女御の皇女らはどうかのぅー?』
と…。
まぁ、一応王は許可してくれてる感じ一みたいな…。」
萠喜はあのお気楽気味な王を思い出す。
うん。確かにあっさり許可しそうだ。
「今回、一族の件で城に上がったが、ちょっと皇女らにも用があって…だな…。」
「なるほど。
皇女らのお世話をするこの宮の上格女官に、皇女との面会を乞いに来た…ですね?」
悠咏と菖韋はいきなり言い出しにくかった用件をズバリ言われて驚いた。
「「…はい、そうです。」」
二人は国内で聞いた噂も含めて、女官・萠喜の反応をこう考えていた。
現在の皇女付き女官の二人は、国王からの信頼も厚く、皇女らに関する事になると、王以上にうるさい。
ので、皇女らに近づく野郎なぞ、まず追い返されるーー。
それを回避するために、遠回しに言葉を取り繕う必要がある。
と、思っていたのだ。
しかし予想はまったく外れ、今、自分らの黒い考えを吹っ飛ばして、目の前で考え込んでいる。萠喜は額に手を当て、菖韋は考え込む。
「王の許可を得たとはいえど、国で高い地位を持つ珪一族様が、皇女への面会の段取りを間違えている所は気に入りませんね。」
「「は?」」
悠咏と菖韋は言われた意味をすぐには理解出来なかった。
「あの…それは、どういうことでしょう?」
戸惑う二人に対して萠喜は毅然と述べる。
「ですから、なぜ皇女付き女官の私を通してから、正式な形で皇女の許可を得なかったのか。
と、私はそこが気にくわなかったと申しているのです。」
「えぇっ!?だから、こうして貴女にこう許しを…」
(『…朱…華?』)
菖韋はハッとした。
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