珍客

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なぜ、萠喜が怪訝な顔しているのかー。 なぜ、皇女の許しが出ている話になっているのかーー。 菖韋は立ち上がった。 「ま…ままままさか!?」 菖韋の顔がみるみる蒼白になり、そして静かに座る道案内人を見る。 「菖韋?」 悠咏はまだ自体を理解できずにいる。 「朱華様?一体どういうことです?」 萠喜が朱華に声を掛ける。 それに応えて朱華が椅子から立ち上がり、机の側に寄ってきた。 「ええ、実は自室から出る直前に父上からの文が届いたの。」 朱華はピラッと一枚の手紙を全員に見せる。 内容は… 『困ってる人には声を掛けよう』 「…そういうことか…。」 悠咏はというと、手紙をじっと見つめて疑問符を飛ばしている。 菖韋は椅子から立ち上がり、その場に膝まづいた。  それを見た悠咏は、やっとことの次第に辿り着き、そして一緒に膝をつく。 「知らずとはいえ、私達の数々のご無礼、どうかお許し下さい朱貴姫様。」 「まさか貴女様が私達が会いたがっていた方だとは気付きませんでした。 本っ当に申し訳ありません!」 頭を下げた二人に対して朱華は慌てた。 「あの、私も皇女と名乗らずにここまで案内してしまったし…。  それに本名は公開してないし、あまり公の場にも顔を出さないから、私を知らないのも当然です。 なので、謝らなくてもいいんですよ?」 さっき道案内してもらった時とはまた違ったオーラを出す朱華が、ニッコリ笑う。 朱華は頭の隅で、父の文面を思い出す。 (あれは悠咏殿らと接触しろってことだったのね。) 二人が生まれた時、 母親二人の希望により本名は伏せ、頭一字を含んだ言葉で民衆に知らされた。 『光に誘われ朱の風が、舞い謳うために国に吹く』 「朱」「蒼」「桔」は原色には出せぬ深い色調とされ、 また天人たちが大切にした色だと言われる 深い「朱」に優しい「風」。 なので近筋の光一族・直属女官以外は、皇女らにはこの字がついている。くらいのレベルでしか知らないのだ。
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