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ふと朱華は風華を見た。
一一一風華の顔に隈…。
「ねぇ 風華、さっきまで何してた?」
「さっきまで?うん。実はずっと部屋で読書をしてたの~」
「…いつから読み始めたの?」
「え…え~と…」
風華の目が泳ぐ。
その反応で朱華は確信を持った。
「二日前から今の今まで、私はあなたに会った覚えが無いんだけど?」
「…。え…エヘヘ…、実は二日前からずっと本読んでました。」
―やっぱり!!
朱華は機転がきき、芸術・勉学の才に優れているが、自分に何も省みずに、人のために突っ走る傾向がある。
そして風華は優しくおっとりしており、朱華を上回る切れ者で、全てを受け入れる心の広さを持ち合わせる。
まさに王になるべき人物。
…なのだが
「また引き込もってたのね!?ちゃんとご飯食べてたのっ!!?」
風華の肩を朱華はガッと掴み、すごい剣幕で怒り始めた。
「あれ?う~ん。食べ…た…かなぁ?どうだったっけ??」
その答えを聞いた朱華は、絶対食べてない!と思った。
「でも誰かに見られながら食べるなんて、食事にならない気がするしねぇ。」
(産まれた時から人が周りにいるのに、まだ慣れないのか…)
朱華は額をおさえた。
風華のダメなところは、自分の意思を表に現さず、また人を苦手とするところだ。
それさえなんとかすれば良き王になれる筈だ。
朱華は強引に風華の腕を掴み、一目散に風華の部屋へ引っ張って行った。
「え?え?朱華一??」
「こんの馬鹿っっ!“才色兼備の麗しき花”という言われを持つあんたが何してんのよっ!!?
ったくも~。
ご飯持ってくるから、部屋で待ってなさいっ!」
朱華は風華の部屋に辿り着いたと同時に、風華を部屋に投げ置き、怒りをブチまけて、炊事室に急いで駆けて行った。
風華はホロッと口許を緩めた。
そんな朱華の優しさがとても嬉しかった。
少しして、朱華は作りたての膳を手に持ち、風華の部屋に戻ってきた。
「風華?入るわよ。」
「………。」
―――?
返事の無い部屋の戸を朱華は開いた。
「あらら、寝ちゃったのね。ふふっ、まだご飯食べてないのにぃ。」
風華は寝台でスヤスヤと可愛い寝息を立てて眠っていた。
それを横目に、朱華は膳を側にあった机に置いて、風華の寝台に座って妹の寝顔を見た。
朱華はそっと風華に毛布をかけた。そして言葉を落とした
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