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「あなたは王としてとても大切な『力』を持ってるんだからね…。」
ここ光影国は、光ノ国・影ノ国の二つに別れており、この両国の力のバランスによって平和を保っている。
それを調節するのが王であり、国の守り人なのだ。
王は不思議な力を用いて両国の平和のために協力し合っている。
「天人」を祖先に持ち、その力を一番色濃く引き継ぐ光一族が、光ノ国の王族として遥か大古から王位をになってきた。
なので必然として、代々 『力』が強く表れるのは王直系のため、朱華や風華も例外では無い。
皇女ら二人は、物心ついた頃から自分の不思議な『力』を使いこなしていた。
だが、風華の力は止まることなく増していき、今や現王をも凌ぐ力がある事を知るのは朱華のみ。
風華の小さい頃の『力』しか知らず、今の性格(温和すぎでおっとり)を知る周りの者は
「王の器では無い。」
と、決めつけている。
朱華は、そんな周りや一族の態度に腹を立てていた。
「いけない…。考えてるだけで腹が立ってきたわ…!」
いつの間にか拳を強く握り締め、眉をつり上げてる自分を抑えるため、朱華は部屋を出て、陽の射す目の前の庭に出た。
「そういや昔、よくここで力のコントロ―ル練習を、風華と一緒にやったわね。」
幼い皇女二人は、力の暴走を防ぐため、少し力が使える母親達に練習を見てもらっていた。
朱華は小鳥が上を飛び交う庭先に目をやり、ふと思った。
「そうだわ…もう母様が亡くなって十年がたつのね…。」
朱華の母はもともと体が弱く、病への抵抗力が低かったため、その年に起きた流行り病にかかって死んだのだった。
朱華は庭から視線を天に向け、小鳥が二羽飛んでいるのを見てから、そっと目を閉じ、小鳥の声に耳を傾けたた。
――ピヨ。チュッ
―――ピィ ピチッ。
(あ~、なんだか腹立ってるのが癒されてく気がする…)
――ピピピッ!(ばさっ)
ピィッ!(ばさばさっ)
「……ん?ばさばさ??」
いきなり静かになったので、朱華は目を開けた。と、その瞬間、朱華はぎょっとした。
「と、鳥が降ってくる―っ!?」
なぜか小鳥が自分のところに一羽落ちてきたのだ。
「わわι ほっ!」
朱華はすかさず小鳥をキャッチ。
とっさにもう一羽も落ちたんじゃないかと辺りを見渡した。
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