国の伝承

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国の伝承

―荒野が広がる土地。 月が照らす大地に一つ、火が灯る場所があった。 人々はそこで火を焚き、身を寄せあって暗い顔をしていた。 その集団の後ろで突如、若い男の声を人々は聞いた。 「お主ら、争いはもう嫌だと思わぬか?」 いつからいたのか、どこから現れたかは分からない。 人々をじっと見ていた青年が、もう一度言葉を問いかけてくる。 「…平和が欲しいと思わぬか?」 その男の言葉に皆、涙して頷き、顔を下に向けてうなだれた。 人々の真ん中で、火がただ、こうこうと燃え揺らいでいた。
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