27人が本棚に入れています
本棚に追加
何人かは天へと戻り、また何人かは地上に残った。
その残った天人達の子孫が、「光」を始めとする、不思議な力を持つ一族なのである。
「…まぁだいたい覚えられた…かな?」
朱華が資料に顔を突っ伏して、側にいる風華に言った。
「話自体がそんなに難しいわけじゃないしね~。
それに、私達の先祖樣の話だから興味は持てるよね~。」
朱華の散らかした資料を拾いながら、風華がのんびり答えた。
とその時、声が聞こえた。
「失礼します。風華樣、学の時間にございます。西の宮へと参りましょう。」
「どうぞ~、入ってくださ~い。」
朱華は凛とした姿勢になる。
「失礼します。!」
礼儀正しく部屋に入って来た風華付きの待女・萠喜(めき)は、朱華の姿を見て、礼をしたまま静かに言葉を運んだ。
「朱華樣。こちらにおられましたか。何やら彗結(すいゆう)が、
『時間になっても朱華樣がお部屋にお戻りにならない!』
と、嘆いておりましたよ?」
朱華はハッとした。
「あ…。私ったら叔母樣に会いに行くと言ったままで、こちらに来てしまいましたわ。」
朱華は口に手をあて、笑ってみせた。ここにいるという連絡を、自分の待女にするのをすっかり忘れていたのだ。
(それにしても…)
風華は上品に振る舞う朱華をジッと見た。
(人前でこれだものね…。さすがは皇女だわ~。)
朱華は自分の王族としての立場をしっかりとわきまえ、したたかな姫を演じているのだ。
(私、絶対無理だわぁ…)
風華は優美に笑う朱華に感心した。
暖かな陽光が照る午後。
西の宮の一室で、皇女二人は学に通じた多数の女官達の前で宿題の出来を披露した。
風華はやはり完璧とは言えない出来だった。急いで勉強した朱華はなんとか合格を貰ったのだった。
(よ…良かった―!!)
朱華はホッとした。
「でわ、次の宿題は今までの国王の名前と統治状態を…」
年長の待女達が、たくさんの資料をバンッと机の上に披露してみせた。
「こ…これ全部…ですか~!?」
さすがの風華も驚き、顔をひきつらせた。
朱華は顔を両手で覆っている。
(あれは私に見えなかったわよっ!あんな資料の山なんて知らないわっ!!)
朱華は現実逃避に走っていた。
最初のコメントを投稿しよう!