国の伝承

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何人かは天へと戻り、また何人かは地上に残った。  その残った天人達の子孫が、「光」を始めとする、不思議な力を持つ一族なのである。 「…まぁだいたい覚えられた…かな?」 朱華が資料に顔を突っ伏して、側にいる風華に言った。 「話自体がそんなに難しいわけじゃないしね~。 それに、私達の先祖樣の話だから興味は持てるよね~。」 朱華の散らかした資料を拾いながら、風華がのんびり答えた。 とその時、声が聞こえた。 「失礼します。風華樣、学の時間にございます。西の宮へと参りましょう。」 「どうぞ~、入ってくださ~い。」 朱華は凛とした姿勢になる。 「失礼します。!」 礼儀正しく部屋に入って来た風華付きの待女・萠喜(めき)は、朱華の姿を見て、礼をしたまま静かに言葉を運んだ。 「朱華樣。こちらにおられましたか。何やら彗結(すいゆう)が、 『時間になっても朱華樣がお部屋にお戻りにならない!』 と、嘆いておりましたよ?」 朱華はハッとした。 「あ…。私ったら叔母樣に会いに行くと言ったままで、こちらに来てしまいましたわ。」 朱華は口に手をあて、笑ってみせた。ここにいるという連絡を、自分の待女にするのをすっかり忘れていたのだ。 (それにしても…) 風華は上品に振る舞う朱華をジッと見た。 (人前でこれだものね…。さすがは皇女だわ~。)  朱華は自分の王族としての立場をしっかりとわきまえ、したたかな姫を演じているのだ。 (私、絶対無理だわぁ…) 風華は優美に笑う朱華に感心した。 暖かな陽光が照る午後。 西の宮の一室で、皇女二人は学に通じた多数の女官達の前で宿題の出来を披露した。 風華はやはり完璧とは言えない出来だった。急いで勉強した朱華はなんとか合格を貰ったのだった。 (よ…良かった―!!) 朱華はホッとした。 「でわ、次の宿題は今までの国王の名前と統治状態を…」 年長の待女達が、たくさんの資料をバンッと机の上に披露してみせた。 「こ…これ全部…ですか~!?」 さすがの風華も驚き、顔をひきつらせた。 朱華は顔を両手で覆っている。 (あれは私に見えなかったわよっ!あんな資料の山なんて知らないわっ!!) 朱華は現実逃避に走っていた。
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