0人が本棚に入れています
本棚に追加
『いけねぇ。おにぎりはもっと大事に食わないと…。あと2個しかないんだもんな』
ほんとは腹一杯になるまで食べたかったんだけど、三十郎は,がまんを決めた。
でも、なかなか思い切りがつかなくて、いつまでも弁当箱の中をながめていた。
どんなに見つめてたって、
おにぎりは増えやしないのにさ。
『いっち、にい、いっち、にい…』
残ったおにぎりを数える声がする。
何度も何度も、だんだん大きく…。えっ⁉
ちょっと待てよ。
三十郎は、心の中では数えてたかもしれないけど、声に出しちゃいないぞ❗
あわてて弁当箱のフタをしめて、
あたりを用心深く見回してみると、
黒くて長い点線が、地面の上をはってゆく。
『いっち、にい、いっち、にい❗』
大きな声に足並みを、揃えた、アリの行進だ。
∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝
『なんだ、アリンコかぁ…』
なんとなく自分に似てるアリたちを眺めながら、三十郎はため息をついた。
『いいなぁ、アリンコは…。なんでも食えてさ。
おいらも、羽をむしっちまえば、アリンコの仲間になれるかなぁ』
三十郎は、小さな羽をふるわせた。
最初のコメントを投稿しよう!