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『いけねぇ。おにぎりはもっと大事に食わないと…。あと2個しかないんだもんな』 ほんとは腹一杯になるまで食べたかったんだけど、三十郎は,がまんを決めた。 でも、なかなか思い切りがつかなくて、いつまでも弁当箱の中をながめていた。 どんなに見つめてたって、 おにぎりは増えやしないのにさ。 『いっち、にい、いっち、にい…』 残ったおにぎりを数える声がする。 何度も何度も、だんだん大きく…。えっ⁉ ちょっと待てよ。 三十郎は、心の中では数えてたかもしれないけど、声に出しちゃいないぞ❗ あわてて弁当箱のフタをしめて、 あたりを用心深く見回してみると、 黒くて長い点線が、地面の上をはってゆく。 『いっち、にい、いっち、にい❗』 大きな声に足並みを、揃えた、アリの行進だ。 ∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝ 『なんだ、アリンコかぁ…』 なんとなく自分に似てるアリたちを眺めながら、三十郎はため息をついた。 『いいなぁ、アリンコは…。なんでも食えてさ。 おいらも、羽をむしっちまえば、アリンコの仲間になれるかなぁ』 三十郎は、小さな羽をふるわせた。
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