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風が流れた。
キノコの傘が静かにゆれると、
黄色い煙が、三十郎の顔めがけて吹き出してきた。
とたんに、目ン玉のうらのコケが、ガサゴソとこすれ合う。
鼻ん中の流しソーメンも
勢いよく始まった。
『ぶわあっくしょい、しょい、しょい‼』
こいつぁ、たまったもんじゃない。
三十郎は、ころげるように、飛んで逃げた。
キノコの目つぶしをまともに食らって、まわりが見えやしない。
葉っぱや、小枝やシダや、つるにぶつかって、
あっちこっちはじかれているうち、川のせせらぎが聞こえてきた。
『ちょうどいいや。
とにかく目ン玉、洗おう。鼻かもう』
かすかな水の音をたよりに、
三十郎は飛んだ。飛んだ。
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