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三十郎は、ひとりぼっちで泣いていた。涙が勝手にこぼれ落ちて、止まらないんだ。
粘土を固めたみたいに、重なり合った雲の端っこが、パラリンとはがれて
いたずらな目をしたお日様が、あったかぁい息を吹きかけてくると、なんだか心がウキウキしてさ
みんな外に飛び出して、ついつい踊り出しちまうってぇのに、三十郎のヤツは、ふとんにくるまって、ひとりぼっちで泣いていた。
何も悲しいことなんか、ないんだよ。でも、涙が勝手にこぼれて落ちて、止まらないんだ。
『目ン玉のうらにコケが生えてっぞ』
三十郎は、そう思った。
『鼻ン中で、流しそーめんをしてる』
三十郎は、そうも思った。
『どうしてだい?なんでだよぉ、ふぉ…ぶわっくしょい‼』
三十郎は、花粉症だった。
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