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三十郎は,ひとりぼっちで泣いていた。
涙が勝手にこぼれ落ちて、止まらないんだ。
どこを、どう飛んだのか、自分でもわからない。
気がつけば、うす暗い森のキノコの上で、ひざっこぞうをかかえてた。
それにしても、森ってえのは、本当に不思議なところだ。
静かになればなるほど、やかましいんだからな。
夜になって、おしゃべりがなくなると、代わりに音が見えてくる。
風が動いている音。
水が動いている音。
土が、雲が、星が、動いている音、音、音。
こっそりかくれていた音たちが、むくむくと大きくなるのが見えるんだ。
さびしい夜の森の中で、静かな音の群れに囲まれてしまうと、誰かの声が聞きたくて、悲しい気持ちになっちまう。
だから、三十郎は、ひとりぼっちで泣いていた。
涙が勝手にこぼれ落ちて、止まらないんだ。
弁当箱を抱きしめながら、小さく、まぁるくなって、ふるえているしかないんだ。
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