🌃

2/2
前へ
/30ページ
次へ
三十郎は,ひとりぼっちで泣いていた。 涙が勝手にこぼれ落ちて、止まらないんだ。 どこを、どう飛んだのか、自分でもわからない。 気がつけば、うす暗い森のキノコの上で、ひざっこぞうをかかえてた。 それにしても、森ってえのは、本当に不思議なところだ。 静かになればなるほど、やかましいんだからな。 夜になって、おしゃべりがなくなると、代わりに音が見えてくる。 風が動いている音。 水が動いている音。 土が、雲が、星が、動いている音、音、音。 こっそりかくれていた音たちが、むくむくと大きくなるのが見えるんだ。 さびしい夜の森の中で、静かな音の群れに囲まれてしまうと、誰かの声が聞きたくて、悲しい気持ちになっちまう。 だから、三十郎は、ひとりぼっちで泣いていた。 涙が勝手にこぼれ落ちて、止まらないんだ。 弁当箱を抱きしめながら、小さく、まぁるくなって、ふるえているしかないんだ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加