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一瞬たりとも離れたくないと思っていた存在でさえ、いざ離れてみると大して気になる物でも無くなってしまって……。
君のいた「普通」でさえ、今では遠い記憶として俺の中にしまわれてしまった。
9月12日…
今日は俺の誕生日。
本当に俺がこの日に生まれたかどうかなんて俺本人は知らないけど、幼い頃からこの日を祝ってきたんだからそういう事にするしかないのだと思う。
毎年義務的に繰り返されるこの行事を「楽しい」と思えたのは幼かった頃と…
……アイツがいた頃。
──ヴヴヴヴ…
薄暗い部屋に突然響いた携帯のバイブ音。
解りきっている筈なのに心のどこか奥の方に期待を抱いてしまうのは、まだ君との思い出を引き摺っているから?
宛:芥川慈郎
件名:(non title)
本文:がっくん、今日誕生日だよね?マジマジおめでとー!!
全く最近は便利になったもんだ。
丁度日曜日に被った今年のこの日は、機械的な文字によって祝われる事となる。
それでも誰からも何の言葉もかけられないよりはマシだが……。
しかし、一番望んだ人からもらうこの言葉の悦びを知ってしまったから、本心から祝っているのか解らないこんなモノに幸せなんて感じられるワケもない……
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