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「……と、ここまで書けているんだけどどうかな?」
僕は聞いた。
「ちょっとね。だって話が違うもの」
あいつが返した。
なかなか手厳しい反応だ。
しかし、これに負けてはなにも書けないよな。
うん。そうだな。
「それにしても、あの後ちゃんと会えたのにそれは書かないの?」
それじゃ、まんまで良くないかな、という表情に僕はなっていた。
それに、彼のことはなるべく書きたくはないしな。
「だって、秘密だろ」
外はあの日と同じように雪が降っている。
「だけど、ハンカチは本当にお前のだったけど、あんなのが書いてあるなんてな。まぁそれのお陰で一生独身はなんとかなくなったけど」
軽く笑いながら言った。
今、思い出しても面白い話だ。
あいつも僕も恥ずかしいので深くは言えないが。
フィクション的に書けば、誰も本当にあったとは思わないだろう。
「で、こんなの本当に売るの?」
なかなか酷いことを言うものだ。
しかし、今の僕には通用しない。
そう、
「まぁ、いいだろ」
隣に張ってあった写真には、ほほを赤らめる僕とあいつを祝福するように笑っている、今にも溶けかかった彼がいた。
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