伊藤幸宏の「ありがとう」

5/9
前へ
/37ページ
次へ
 父親が定年する前日、私を近所の居酒屋へ呼んだ。 「待ったかい?」 「いや、大丈夫だ。先にやってたから」 「明日が最後なのに深酒で遅刻なんて洒落にならないぞ」 「俺がそんなヤワに見えるか?」 「もう60だろ」 ハハっと親父がすでに真っ赤にした顔で笑う。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加