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年末に肺転移が見つかり、残された治療法が抗癌剤しかない事を知った私たちは、久し振りに「二人の将来」の話をした。
『治療で癌の進行さえ抑えられたら入籍しよう』と…。
『精子の冷凍保存はせずに、抗がん剤治療が始まるまでに妊娠出来なかったら子どもは諦めよう』と…。
抗がん剤治療を受けても、男性の場合なら一定期間をあければ正常な精子に戻るらしいが、私たちはそう決めたのだ。
今思えば安易な考え。
妊娠して心底そう思った。
私は自分が「できちゃった結婚」ですら出来ないのか…と、勝手に落ち込んだりもしたが、私の母親からは
『一番傷付くのはカナメ君だよ。なんでそんなヒドイ事をしたんだ!』と叱られた。
その通りだと思った…。
現に私達は
喜べずにいたから…。
先の見えない不安にいざ立ち向かおうとしているカナメに、もはや私の事を気遣う余裕は無い。
私も今まで同様、カナメ中心の生活を送る中で、妊娠・出産なんて考えられなかった。
そして…
2005年2月5日私はカナメとの赤ちゃんを堕ろした。
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