ガンの告知

3/4

26264人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
手術のキズは予想をはるかに越え、かなり目立っていた。 耳の下が…ゴッソリとえぐり取られている。 しかもこの陥没は、時間が経っても元には戻らないという。 カナメは他人の視線を非常に気にするようになった。 すれ違う人は容赦無くカナメに振り返り、子供らは陥没した顔を食い入るように見た。 幸いと言うか…ただ若いと言うべきか…。 今は自覚が全く無い分、自分が癌である事実よりも、目の前にある自分の顔の方がカナメにとっては重要なようで、鏡を見る度に… 『本当に醜くい…』 そうつぶやいていた。 『そんなに気にする事無いよ!! 今は手術の為に丸刈りだけど、伸びれば髪型でカバーも出来るし、自分で言うほど前と変わってないよ!!』 …と、私は粗末な慰めしか言えなかった。 すぐには無理でも、もう少し時間が経てば陥没した顔など気にしないで、また前を向いて歩いてくれるものだと…  信じるしかない――― 私自身は、この陥没を見る度に「癌がいかに大きかったか」目の前で証明されている気がして… 辛く、そしてとても怖かった。  
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26264人が本棚に入れています
本棚に追加