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手術のキズは予想をはるかに越え、かなり目立っていた。
耳の下が…ゴッソリとえぐり取られている。
しかもこの陥没は、時間が経っても元には戻らないという。
カナメは他人の視線を非常に気にするようになった。
すれ違う人は容赦無くカナメに振り返り、子供らは陥没した顔を食い入るように見た。
幸いと言うか…ただ若いと言うべきか…。
今は自覚が全く無い分、自分が癌である事実よりも、目の前にある自分の顔の方がカナメにとっては重要なようで、鏡を見る度に…
『本当に醜くい…』
そうつぶやいていた。
『そんなに気にする事無いよ!!
今は手術の為に丸刈りだけど、伸びれば髪型でカバーも出来るし、自分で言うほど前と変わってないよ!!』
…と、私は粗末な慰めしか言えなかった。
すぐには無理でも、もう少し時間が経てば陥没した顔など気にしないで、また前を向いて歩いてくれるものだと…
信じるしかない―――
私自身は、この陥没を見る度に「癌がいかに大きかったか」目の前で証明されている気がして…
辛く、そしてとても怖かった。
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