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術後は傷の痛みはアルものの、早い段階で一般の食事が出された。
カナメが入院したJ大学病院は県内でも有数の巨大病院の為、同フロアーは耳鼻科の患者のみ。
カナメと同じ部位を手術した人は、見ればすぐに分かった。
やはり年配者ばかりだったが、そちらの方も同じように分かるようで…
『君も耳下線に腫瘍かい?
でも良性だったんだろ!?
悪性じゃ無くて良かったねぇ』
…と話し掛けて来た。
そしてカナメは力なく嘘を…。
本当の事を口にするのが嫌だったのかもしれないが、彼は自分の苦しみを飲み込み、他人に気を使える優しい人なのだ。
まぁ…本当の事を言った所でどうにもなら無い事だし、その場を切り上げるために話を合わせただけかもしれないが…。
私はそんなカナメの姿が…正直痛々しく思えた。
数日後、手術時に摘出した腫瘍が“癌”だとハッキリ結果が出た。
そして今後の治療は「放射線治療」一本に決まった。
『放射線だけでなく抗癌剤治療はやらないのか?』
カナメが主治医に尋ねると…
『必要ないだろう』
主治医はそう軽く答えた。
放射線治療は通院でも可能なので、幸い自宅と病院が近かった為、退院する事にした。
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