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小学校二年の夏、初めて母の実家の長野に遊びに行った。
今想えばそれがそもそもの間違いだったのかも知れない。
でも仕方のないことだ、その時はまだ自分にとっても未来は不確定のことでわかりはしなかったのだから。
じいちゃんの家に着き、なんのきなしに出掛けた散歩、ちょっと離れた山道を歩き夏の陽射しが降り注ぐ河原にでたとき、そいつはいたんだ。
熊を睨み据えながら平然と川の浅瀬に立つ女の子がね。
歳は自分と同じくらいで薄い青の浴衣を着ていたと思う。
あやふやなのは、その女の子が神懸かった様に美しくてそっちにばかり視線がいっていたから。
同じ年頃の女の子をそんなふうに感じるのは初めてで少し変な気分だった。
我に返って、女の子を助けなくては、そう思った俺…だけど叫びもせず泣くことすらしていなかった女の子が憮然としていた表情を凄絶な笑みに変えたとき
左眼と頭に刺されたような痛みを感じ、それが過ぎ去った後にはもう…
視えていたんだ
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