1.序章~Presto~

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「なっ?景色いいだろ?」 横でにかっと笑ったのはよっちゃん。本名は吉田洋二で、どっちにしろよっちゃんて呼ばれる他がない。 「すげーな!!よっちゃん、どうやって見つけたんだよ!?」 尋ねたのはバカの拓造。皆はバカ造って呼ぶんだけど、どこがバカかよく知らないから、ぼくはタクゾーって呼んでる。 「バカ造、知らないんか?オレの父ちゃんの会社だぞ!?」 そう。このビルは白金ビルと言って、そこでよっちゃんのお父さんは働いている。よっちゃんによると、お父さんは平社員ていう仕事をしているらしい。平たい仕事って何なんだろう? 「ええーっ!?おい、南は知ってたのか?」 「うん。」 「南は何回かここに来たもんな。南の父ちゃんもここで働いてるし。」 そう。でも、ぼくのお父さんは平社員て仕事はしていない。というか何してるかもわからない。 「だけど、南の父ちゃんあんま見ないんだよな。うちの父ちゃんも言ってた。」 「オフィスからなかなか出て来れないんだって。」 「何だよそれ。エリートじゃん。」 「タクゾー、エリートは外にもいるよ。」 「そうだ!バカ造。オレの父ちゃんはいろんなとこ出回ってるけど、きっとエリートだ!」 「いや、そういう意味じゃなくて。パソコンとか使って仕事してんのかなって。南の父ちゃん。」 「そうかな…」 お父さんがパソコンを使っているとか考えにくい。そういう風には見えないから。 「それはいいとして、これからかくれんぼしねぇか?」 「ええっ?」 「広いから、探すの大変じゃないかぁ。」 「もちろん、部屋に隠れるのはナシ。怒られるからな。」 「じゃあ…廊下とか、トイレとか?」 「トイレに隠れたければな。」 よっちゃんは手を出した。 タクゾーは、真剣な眼差しでよっちゃんと、ぼくとを見る。 『じゃんけん――』
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