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「なっ?景色いいだろ?」
横でにかっと笑ったのはよっちゃん。本名は吉田洋二で、どっちにしろよっちゃんて呼ばれる他がない。
「すげーな!!よっちゃん、どうやって見つけたんだよ!?」
尋ねたのはバカの拓造。皆はバカ造って呼ぶんだけど、どこがバカかよく知らないから、ぼくはタクゾーって呼んでる。
「バカ造、知らないんか?オレの父ちゃんの会社だぞ!?」
そう。このビルは白金ビルと言って、そこでよっちゃんのお父さんは働いている。よっちゃんによると、お父さんは平社員ていう仕事をしているらしい。平たい仕事って何なんだろう?
「ええーっ!?おい、南は知ってたのか?」
「うん。」
「南は何回かここに来たもんな。南の父ちゃんもここで働いてるし。」
そう。でも、ぼくのお父さんは平社員て仕事はしていない。というか何してるかもわからない。
「だけど、南の父ちゃんあんま見ないんだよな。うちの父ちゃんも言ってた。」
「オフィスからなかなか出て来れないんだって。」
「何だよそれ。エリートじゃん。」
「タクゾー、エリートは外にもいるよ。」
「そうだ!バカ造。オレの父ちゃんはいろんなとこ出回ってるけど、きっとエリートだ!」
「いや、そういう意味じゃなくて。パソコンとか使って仕事してんのかなって。南の父ちゃん。」
「そうかな…」
お父さんがパソコンを使っているとか考えにくい。そういう風には見えないから。
「それはいいとして、これからかくれんぼしねぇか?」
「ええっ?」
「広いから、探すの大変じゃないかぁ。」
「もちろん、部屋に隠れるのはナシ。怒られるからな。」
「じゃあ…廊下とか、トイレとか?」
「トイレに隠れたければな。」
よっちゃんは手を出した。
タクゾーは、真剣な眼差しでよっちゃんと、ぼくとを見る。
『じゃんけん――』
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