2.間奏~Andante~

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「今から、隣のビルに移る計画を発表する。」 「・・・・・」 「まず、ガンマ。」 へっ、とせせら笑って、さっきの煙草男が立ち上がる。 「今の建材で上ェ登れば、確実にこのビルは崩壊する。」 ガンマは上まで登り詰めた時のビルの高さ、強度を計測した。派手な計算式を並ばせて導いた答えは、もうこれ以上登らない方がいい、という事だった。 「まァこんな所だ。ンで?何か反論したそうな顔ォしてんなァ、煉。」 すっ、と眼鏡の男が立ち上がる。ふわふわした黒髪をかきあげて、邪魔そうに前髪をふるった。 「強度の点なら心配ない。軸部には強靭な建材しか使っていない。物理的に言えばまだ登れる。」 すっ、と横から体躯の良い男が現れた。ずん、と前に進み出て辺りを見回す。 「…生活品。」 「余裕は?」 中央の男が問う。 「微弱。ガンマ、頼む。」 「あィよ。日数計算だな。ちゃんとストック教えろよ、ドク。」 「後。」 それだけ言うと、ドクは引っ込んだ。 「話を戻そう。ガンマは計画の進行は崩壊に繋がると。対して煉は地盤の強度を保証している。」 互いが互いを見る。睨む、ではなく。 「どうする、エス。」 呼ばれて、ようやく片隅にある机に周囲の目が向いた。 「…まだ下部チームの話を聞いていない。」 周囲の目はゆっくり金色の短髪男に向いた。 「え、いや、その。」 ごくりと息を飲み、さらにはっ、と一息。 「あの、まだ熱いです。」 「熱い、ってどれくらい?」 「あ、かかかなりですっ。」 周囲の目はまたエスに向く。 「という訳だ。」 しばらくエスは頬杖をついて黙りこくった。 「お前はどう思う?倉井。」 中央の男が左下へ視線を向けた。端正な顔立ちが暖炉の炎に照らされる。 「将が言うのならば、まだ地表には降りることはおろか、下層部から建材を調達することも難しいだろう。」 将はおろおろしながら数歩後ずさった。 「・・・・・」 「エス。」 「・・・登る。」
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