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「!!」
幾人かは確実に目を見開いた。
「倒れてもいィのかよ!」
「生活品、無い。」
「まだいけるってことだろう?」
「落ち着け!!エスの考えを聞こう!」
再びエスに沈黙の視線が向く。
「…登れば傾く。倒れる先を計算する。中層部に橋を造る。高さはまだいる。」
エスが顔を上げる。どこまでも漆黒の瞳が皆を見据える。
「以上。」
そして、エスはそっぽを向いた。
「・・・。まぁそういうことだ。」
「あの、わわ分からない―っす。」
「将に同じく。」
「同じ。」
「あァ、俺もだ。」
「・・・エス。」
頭を抱える恰好になっていたエスは、俯いたまま頭を振った。
「…仕方ない。見損なうな。」
視線が、一気にエスへ。
エスは、ゆっくり頭をもたげ。
がばっ、と全員の瞳を捉えた。
「――!!」
初めての経験だった将は思わず机にしがみついた。
網膜に焼き付けられるかのように、ビル全体のシルエットが浮かんだ。
それはもの凄い速さで上へ上へと組み立てられて、重みでぐらっと傾いた。さらに中層部から伸びた橋が重しのように傾きに加速をかける。
ギィイィィ、と音を立てて倒れて、そして。
バチッ――
いきなり、暗い部屋に戻った。
ぱちぱちと炎が爆ぜている。
「い今、の――」
将が辺りを見回した。
「そういうことか!!」
「いやァ考えたな!エス!!」
ざわざわと騒ぎ出した連中に将はついていけなくなった。
「…ということだ。ビルを傾ける計算と建材の調達。生活品の残量に人材派遣。課題はたくさんある。皆心してかかるように。」
互いに、視線で合図が送られる。
ボサボサの茶髪を束ねながらガンマが。
カジュアルな服装に白衣を纏って煉が。
長いGジャンコートを羽織ってドクが。
計測機器をリュックに詰め込んだ将が。
中央で資料とパソコンを持った倉井が。
机で伏せがちな顔を少し上げてエスが。
「じャな。」
ひらひらと手を振ってガンマが退場。
「ドク、お前も来ィや。」
「生活品計算。」
ドクも引き続いて退場。
「さて、と。上質な建材探しか。」
「あぁ、そのことなんだが、煉。」
「何だ?」
話しながら煉と倉井が退場。
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