2.間奏~Andante~

4/5
前へ
/8ページ
次へ
「!!」 幾人かは確実に目を見開いた。 「倒れてもいィのかよ!」 「生活品、無い。」 「まだいけるってことだろう?」 「落ち着け!!エスの考えを聞こう!」 再びエスに沈黙の視線が向く。 「…登れば傾く。倒れる先を計算する。中層部に橋を造る。高さはまだいる。」 エスが顔を上げる。どこまでも漆黒の瞳が皆を見据える。 「以上。」 そして、エスはそっぽを向いた。 「・・・。まぁそういうことだ。」 「あの、わわ分からない―っす。」 「将に同じく。」 「同じ。」 「あァ、俺もだ。」 「・・・エス。」 頭を抱える恰好になっていたエスは、俯いたまま頭を振った。 「…仕方ない。見損なうな。」 視線が、一気にエスへ。 エスは、ゆっくり頭をもたげ。 がばっ、と全員の瞳を捉えた。 「――!!」 初めての経験だった将は思わず机にしがみついた。 網膜に焼き付けられるかのように、ビル全体のシルエットが浮かんだ。 それはもの凄い速さで上へ上へと組み立てられて、重みでぐらっと傾いた。さらに中層部から伸びた橋が重しのように傾きに加速をかける。 ギィイィィ、と音を立てて倒れて、そして。 バチッ―― いきなり、暗い部屋に戻った。 ぱちぱちと炎が爆ぜている。 「い今、の――」 将が辺りを見回した。 「そういうことか!!」 「いやァ考えたな!エス!!」 ざわざわと騒ぎ出した連中に将はついていけなくなった。 「…ということだ。ビルを傾ける計算と建材の調達。生活品の残量に人材派遣。課題はたくさんある。皆心してかかるように。」 互いに、視線で合図が送られる。 ボサボサの茶髪を束ねながらガンマが。 カジュアルな服装に白衣を纏って煉が。 長いGジャンコートを羽織ってドクが。 計測機器をリュックに詰め込んだ将が。 中央で資料とパソコンを持った倉井が。 机で伏せがちな顔を少し上げてエスが。 「じャな。」 ひらひらと手を振ってガンマが退場。 「ドク、お前も来ィや。」 「生活品計算。」 ドクも引き続いて退場。 「さて、と。上質な建材探しか。」 「あぁ、そのことなんだが、煉。」 「何だ?」 話しながら煉と倉井が退場。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加