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辺りは暗く静かな夜だ。
涼しい風が、穴の空いた左足や傷だらけの頭を包みこむ。
いたる箇所から大量にしたたる僕の血は、暗い夜をより一層暗くした。
今、僕は鉄パイプを杖にしながら、とある神社の賽銭箱の前にあるイスを見据えている。
生きて元の世界へ帰るために。
ただ、彼はそうはさせてくれないようだ。
彼は僕とイスの間に立ち、僕の願いを妨げるべく引き金を、引こうとしている。
血を流しすぎて、武器になりそうな鉄パイプも杖にしかなっていない今の僕には、もはや抗う術はない。
背中のアレが動き出した。時間も……あとわずかのようだ。
本当なら僕は今日、彼女の誕生日を祝っているハズだった
何故だ!!
後悔や理不尽な運命に対する憎しみが狂いそうなほど、涙と共にわき出て来る。
その思いが僕になり、頭がいっぱいになった時、
鼓動すらも聞こえないほどの静寂になった。
そして
パン!!
この後にあった音は、人が一人倒れる音だった。
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