おぼろ月夜

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それからマンションまで少しの間、黙って歩いた。 おばさん達は5階に住んでいる。あたしの家は2階で、中の造りも同じだった。 「座って、テレビでも見てて。」 「いえ、手伝います。」 「本当?」 おばさんの目が輝いている。 「はい」とあたしも笑顔で返した。 人に笑顔を向けたのはいつぶりだろう。 おばさんの隣で自然と笑えてた。 台所に立つのも久しぶり。 まな板の上で響くトントンという包丁の音が大好きだった。
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