誓いの花の元へ

3/10
前へ
/10ページ
次へ
  『勿論…!勿論です!何時までも、何時までも待ちます!貴方の…、帰りを』 貴方はより一層、顔を和らげて ありがとう と言いました。 私は、堪らなくなって。 貴方に抱きつきました。 貴方は私を受け止めて、優しく頭を撫でてくれました。 大きな手のひら。 暖かな温もり。 心地好い撫でるリズム。 全てが優しくて。 少し。 ほんの少しだけ。 私は泣いてしまいました。 貴方に気付かれないように、一粒だけ。 涙を溢しました。 『気を付けて…。どうか、怪我などせず。病気などならず。…帰ってきて下さいね』 抱きついたまま言う私を、力強く抱き締めて、貴方は『約束する』と言ってくれました。 そっと、肩を掴んで、貴方は私を引き離して。 少し、惜しいな。 そう思う私の目を見ながら、貴方は言いました。 『僕は、きっと帰ってくるよ。…この丘に。君と約束したこの丘に帰ってくるよ。だから、待っててくれるかい?』 『えぇ、えぇ。きっと待っています。ずっと、ずっと待っています』 貴方は、嬉しそうに微笑んで。 『…この丘に咲く花を目印に。僕は帰ってくるよ。この花と君に、誓う』 『分かりました。では、私はこの花を守ります。』 貴方が、帰って来れるように。 そう言った私を貴方はまた抱き締めて。 私の唇に、そっと口付けを落としました。 それは、まるで誓いの時にするようで。 甘くて 暖かくて また、涙が溢れそうでした。    
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加