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ある日。
少女は何時ものように青年の帰りを待っていました。
突然。
花が、目印の花が一枚一枚散り始めました。
彼女は慌てました。
だって、これは目印なのですから。
彼が帰って来るための。
大事な、大事な目印の花なのですから。
この花が無いと。
彼は二度と帰って来ないと彼女は思ったのです。
彼女は花に語ります。
『待って、待って!まだ枯れては駄目!』
それでも、花は散るのを辞めません。
『あの人は、帰って来るの!だから、だから枯れてはいけない!』
花は、聞いてなどくれません。
只、静かに花びらを散らすだけです。
沢山あった、花たちは。
今はもう半分以下になってしまいました。
少女の周りは、散った花びらのピンクで染められています。
『あぁ、どうすれば良いの?あの人は、まだ帰って来ていないのに。この花が無いと、あの人は帰って来れないのに!』
花は勢い良く散っていきます。
まるで、雨が降るように。
止まる事を知らない其れは、もう数える程度にしか残っていません。
少女は、とうとう泣き始めてしまいました。
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