誓いの花の元へ

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  最後の一輪になってしまった其れを手に取って。 涙を流しながら、必死で語ります。 『ねぇ、お願い…。まだ、まだ枯れないで…。』  あの人は  帰って来る  と言ったの。  貴方を目印にして。  約束してくれたの。  誓ってくれたの。  優しく微笑んで。  力強く抱き締めて。  甘い口付けをして。 『約束…。してくれたのよ…』 どれだけ彼女が悲痛に訴えても。 最後の花びらは、ハラリ、ハラリと散ります。 彼女は、その場にしゃがみこみました。 最後の一枚が散った時。 彼女は悟りました。 青年が、もう帰ってなど来ない事を。 彼女は笑いました。 愚かな自分に。 憐れな自分に。 哀しい自分に。 彼女は、思いました。 生きている意味など 無い、と。    
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