誓いの花の元へ

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  真実は。 彼は、ちゃんと帰って来て居たのです。 あの花を目印に、彼女の元へ。 ですが、彼女は気付きません。 すぐ横に居る彼には、気付きません。 彼は困りました。 だって、青年を待つ彼女は、その疲れからどんどん弱っていきましたから。 彼は必死で言います。  僕は、帰って来たよ  君の元へ  誓いの花を目印に  帰って、来たよ  だから、もう  待たなくて良いんだよ  僕を待たなくて  良いんだよ けれど、彼女には聞こえません。 そこで、彼は花を散らし始めたのです。 もう、彼女が待たなくて良いように。 最後の一輪。 彼女が必死で握り、語り掛けるその花を散らします。 涙を溢しながら。 彼女の為に、散らします。 最後の一枚が散った時 彼は消えました。 彼は、花に溶けていました。 花を目印に帰ろうとした彼は、花に溶けていたのです。 彼は、夜の空に溶けました。  
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