誓いの花の元へ

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  彼女は、知りません。 彼が帰って来てた事も。 彼が花に溶けていた事も。 彼が夜空に溶けた事も。 只、彼がもう居ない事だけは分かりました。 分かったから、彼女は飛んだのです。 深い、深い闇の底へ。 彼女は出会いました。 愛しい愛しい、彼に。 彼女は涙を溢しながら、彼を見ます。 両腕を広げて、微笑む彼を。 『…信じてました。貴方は、きっと帰って来ると』 彼女は声を震わせて言います。 『遅くなってゴメンね』  おいで。 その言葉を聞いて、彼女は彼の元へと行きます。 抱きつき、涙を流します。 『おかえり、なさい…。』 『ただいま…。僕を、待って居てくれて、ありがとう。』 『いいえ、いいえ!貴方を待つ事に、苦などありません、から』  只…。  枯らして、しまいました。  貴方との、誓いの花を。 そう言う彼女を、彼は尚力強く抱き締めて言います。 『そんな事、問題じゃないよ』  君が  待って居てくれた事が  嬉しいのだから。  確かに  花は目印で誓いだけれども 『君が、何よりの目印で、何よりの誓いなのだから』 彼女は幸せそうに微笑みました。   彼も幸せそうに微笑んでました。  
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