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外はもう暗くなっていた。後ろから父と母の呼ぶ声が聞こえたが、かまわず豪雨の中を走る。
足が向く場所は、神社。
悩みや嫌なことがあったりすると、いつもここへ来ていた。御神木の根元に座り幹に背を預けると、不思議と気持ちが落ち着くからだった。
階段を一気に駆け上がり、荒い息を吐きながら、御神木の元へと足を運ぶ。
幹にそっと手を寄せ、目を瞑る。
荒い息が治まってくると共に気持ちも静まってきた。小さい頃やっていたように、根元に腰掛け、幹に凭れ掛かる。
ふと、小さい頃の記憶が蘇る。
――…六才くらいだったかな…
(女の子なのに剣道をさせられて嫌がったっけ)
稽古が嫌で、いつもここへ逃げ込んで泣いていた。
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