第一章  真実

6/7
前へ
/66ページ
次へ
『うっ……うぅ……』 幹と向かい合ってないていると、いつも母が迎えにきた。 『狭夜。…おいで。』 優しく声が掛けられる。だが、母へと振り向かずに首を横に振る。 『…っやぁ!!けんどうなんてしたくないっ!!何で、ほかの子はしてないのに、さやはしなきゃいけないのっ…』 周りの女の子は、剣道なんてせずに普通に遊んだり、習うとしてもピアノだとかだった。 母はゆっくりと私へ近寄り、そっと私を振り返らせて、目線を同じにするために屈んだ。 『…狭夜。お父さんは狭夜が嫌いだから剣道をさせてるんじゃないのよ…?』 『……グス…、じゃぁ、なんで?』 『お母さんもだけど、お父さんは、いつかきっと必要になる。今は苦しいだろうが、狭夜の為だって』 『さやのため……?嫌いじゃない?』 母は可笑しそうに笑った。 『…フフ。狭夜を嫌いな訳ないわ。今頃、階段の下でウロウロしてるわよ』 そう言って、母は私の手を握り、階段の方へと連れていく。上からそっと覗いてみると、父が8の字を描きながらウロウロしていた。 『フフ。ほらね。お母さんもだけど、お父さんは狭夜のことが大好きだから、狭夜を探しにきたのよ』 母は、そう言いながら屈み込み、抱き締めながら言葉を続ける。 『…だから、頑張って…離れ離れにならないで済むよう、強く…』 .
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1095人が本棚に入れています
本棚に追加