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あの時は、母の言葉の意味がよく分からなかったが、もしかすると、母達は何かを感じていたのかもしれない。
「狭夜!!」
名前を呼ばれ、声のする方へと目を向けると、傘を持っているに拘らずささずに探しにきた父が立っていた。
「……狭夜。帰ろう。母さんが心配してるぞ」
ゆっくりと近づいてくる。今まで、最後まで迎えにくることがなかった父が息を切らしながら探しにきてくれた。そのことが嬉しくて涙が零れる。
「……お父さん…私、お父さん達の本当の子供じゃないけど、……っ一緒にいても、いい…?お父さん達の子供でいてもっ、い、いっ?」
涙が止まる事無く頬を伝っていく。途切れ途切れになりながらも気持ちを言葉にして伝える。
「当たり前だろう。血は繋がっていなくとも、あの日からお前は私の、私達の本当に大切な子供だ」
父ははっきりとした声で、自分を真直ぐ見つめながら、一番ほしい言葉をくれた。
そして、ゆっくりと大きな手を差出しながら、
「さぁ、早く帰ろう。風邪を引いてしまうぞ」
父の元へと、一歩、足を踏み出した時、青白い光と共に、鼓膜が破れるかと思うほどの轟音が……
最後に見えたのは、父が必死に自分へと手を伸ばす姿だった。
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