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――自分は死んでしまったのだろうか…――
「…………っ……」
遠くから何か聞こえる気がする。
「………おいっ……………しろっ」
段々近づいてくる声と共に体が揺さ振られているかのような感覚がある。
「おいっ!!しっかりしろ!!」
はっきりと声が聞こえた。と、同時に頬に痛みが走った。
「……っつ………な、に?」
痛さで自分が死んでいないことが判り、目を開くと、目の前には二人の男がいた。
「大丈夫だったか。いやぁ、でけぇ雷が落ちたから見にくりゃ、お前ぇが燃えてる家ん中にいんのが見えたからよぉ、急いで外へ担ぎ出したが、まぁ、生きてて良かったな」
二人いるうちの一人の男がそう言いながら、バシバシと肩を叩いてくる。
正直、かなり痛い。
「…いや、原田殿…。雷が直撃した家屋にいて、無事…しかも、傷一つない……この者、怪しくはないか……?」
もう一人の男が、訝しげに見てくる。
そう言われてみてみると、確かに怪我一つない。少しずつ冷静さを取り戻してくる。
自分は、御神木の所にいたはずなのになぜ家のなかに…
辺りを見回すと、木造の家ばかりだ。しかも、二人の男は着物を着ている。周りにいる人たちもみんな着物だ。
おかしい………そう考えていると、ふとあることを思い出した。
…………弘化四年…狭夜……
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