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父は、道場で先生をしており、剣道を教えていた。無口で、顔は恐面だが、不器用な優しさを持っている。生徒達にも最初は恐がられていたが、すぐ慕われるような人柄で自分の自慢の父でもある。
道場の戸を開け、靴を脱ぐ前に一礼をして上がる。小さい頃から躾けられていたので、今ではそれをしないと逆に調子が出ない。
中へ入ると父が正座をし、目を閉じ精神統一をして待っていた。
「ただいま」
声を掛けると、閉じていた目をゆっくりと開き、
「おかえり。着替えてきなさい」
と、制服姿のままの自分に言った。
道場内にある更衣室へと入り、制服を脱ぎ、上の下着を外し、晒しを巻いていく。その方が楽だったし、何より動きやすかった。
生徒達に教えるのは剣道だけだが、父は剣道以外の武道にも精通していたので、自分は剣道以外も習っていた。
剣道着に着替え終わると、竹刀を手に更衣室を出る。
父はすでに素振りを始めていたので、部屋の端で、先程父がしていたように、正座し、精神統一をする。
精神統一を終えると、静かに立ち上がり、竹刀を構え、素振りを始める。
素振りを終え、先に終えていた父の正面へと向かい、お互い礼をして、構え、そして、いつも通り練習を開始した。
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