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「狭夜。…お前は、私達の本当の娘ではない…。」
父の口から発せられた言葉の意味が、よく飲み込めなかった。
(………え?本当の、むす…め、じゃない?)
頭の中を何度もその言葉が飛び回っていて、意味を上手く理解できない。
「…17年前も、今日と同じようにひどい天気だった。」
父は混乱している私を置いて、ぽつりぽつりと言葉を続けていく。
「あの日、裏の神社に二本あるうちの一本の御神木に雷が落ちた。御神木は真っ二つに引き裂かれて炎に包まれていた。」
確かに裏には、一本の御神木があり、神社を挟んだ向こう側には、同じくらいの太さの切り株がある。
「私は、火を消すために神社へ向かった。御神木の元へ行くと、引き裂かれた御神木から泣き声が聞こえる。」
父は一度、言葉を区切り、私の名を呼び、父へと顔を向かせた。
「そこには、…赤ん坊だった…狭夜、お前がいた。」
「………ッ……」
私は、声にならない声を出す。
だって、有り得ない。落雷した御神木の元にいて助かるはずがない。
そんな私の考えを読み取ったかのように、父は話を続ける。
「私も自分の目を疑った。生きている筈がない。だが、赤ん坊は生きている証拠と言わんばかりに泣いている」
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