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コンコン。
コンコン。
控えめに扉を叩く者がいる。
「もしもーし。もしもーし。」
扉の向こうから中を伺うように細々と聞こえる。
「んー?はーい。どなたぁ?」
半分体を起こしたままフワフワと安定しない声で返す。
「あぁ!!やっぱりまた寝てたんですね!?」
ドンドン!!
また騒がしく扉が鳴る。
「あぁ、悪い悪い。そう扉をガシガシ叩くんじゃないよ。んー!」
体に溜まっていた空気を入れ替え大きく伸ばす。
「ところでだ。」
目をこすり布団の縁から足をおろし床に付ける。
また一つ大きく息をはき体に酸素を巡らせる。
「なんで俺は起こされたのかな?」
小さく首を捻り扉に問い掛ける。
「なんでって…。」
ため息が薄くない木の扉を越えて聞こえる。
男はまだ頭を掻いている。
「あなたが明日は特別なことがあるとかないとかで明日は私が部屋の近くで警護に入っているから起こしてくれと昨日の晩俺を起こしに来たんでしょうが!」
一語も切ることもなく早口で大きな声を上げていた。
「んー。あっ、そうだった、そうだった。」
「寝呆けてたんですね!」
「いやぁ悪かった悪かった。この陽気に負けちまってね。」
木のベットは硬く大の男が力を入れて立ち上がっても軋む音がしない。
「陽気のいいのは毎日でしょ。」
「だから毎日負けてるんじゃねぇか。」
「勘弁してくださいよ。」
男は薄い衣を纏っていた。黒い短髪で釣り上がった黒い瞳の目。
身長は180前後だろう。
体の四肢は引き締まりあまり太くはない。
草履を履き足を引きずるように歩いていく。
「おいーっす。」
ドアを開け廊下に顔を出す。
廊下は石で出来ていて、一定の距離を置いて扉のない窓が続いている。
窓と反対側に窓よりは少ないが一定に扉がある。
恐らく部屋の模様はそれぞれだろうが男と同じ様な造りになっていることだろう。
「おはようございます。」
扉の向こう側にいたの男は姿勢を正し、左腕を伸ばし右腕を胸に当て腰を深く曲げた。
さっきまでとは態度が違う。
「あぁ。ご苦労。」
男も姿勢を伸ばし言い放った。
「もういいぞ、頼んだのは俺だ。堅苦しいのは嫌いだ。」
すぐに姿勢を崩し欠伸をした。
「もうしっかりしてくださいよ、隊長。」
"隊長"。
「わぁってるよ。」
この男からはそんな威厳は全く感じられない。
見方によってはタダのやる気のないお兄さんだ。
「んじゃ着替えてくるかな。引き続き警護にあたれ。はぁ、ねみ。」
廊下を歩き始めた。
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