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「あぁ、寝ちゃいそうだわ。眠い眠い。なんかもうストーンと落ちそうだわ。」
着替えながらも何度も欠伸をしていたせいで涙が流れている。
頭をボサボサと掻いて廊下を歩き始めた。
たまにすれ違う兵士は姿勢を正し右腕を胸にあて礼をする。
男は適当に手を揚げ労いの言葉をかける。
男の名はアルフ。
この国の兵を纏める戦士長である。
この国の名はスティグ王国。
この世界では個人の名の前に国名をつけることが一般である。
よって正式な名はスティグ・アルフ。
アルフ隊長、アルフ戦士長、アルフ大将等呼び名は様々だ。
アルフは武器庫から防具を着込んでいた。
青く硬い革の手っ甲をはめ、同様の物で出来たブーツを履き歩いている。
赤く太い丈夫な紐でしっかり結ばれている。
各関節を守るような設計の上下の革の服を着ている。
本来での戦場ではこの上に金属で出来た鎧を着込んで完成である。
「毎回思うがこいつはゴワゴワと動きにくくてしょうがないんだよなぁ。ちゃっちゃと改善してくれねぇかな。」
廊下を歩き、革の服を引っ張ってぼやいている。
「警護に当たる兵達は鎧も着てるいるんです。それに、貴方がぼやくから服屋はてんてこ舞いなんですよ。」
廊下に向かって声が聞こえる。
アルフはドアが開放されている入り口の前で立ち止まった。
「いつの間にか到着。そんなに大声だったか?」
アルフが部屋に入っていく。
アルフの部屋と同じ間取り。
大まかには変わらないがここには大量の書物と資料が所狭しと詰まっている。
「わざと言っているんでしょ?聞こえるように。」
中で椅子に座って作業をしていた男が立ち上がりアルフに向き合った。
「おはようございます。アルフ隊長。お早いお目覚めで。」
男も兵士達と同じように頭を下げた。
ベージュの長いローブを着こみ、髪を首まで伸ばし、清潔さがある黒い髪。
身長はアルフと変わらない程で体付きはよくはない。
「あぁ、おはよう。次期隊長。」
アルフも兵士達にするように僅かに右手を上げる。
「次期ではなく副です。」
頭を上げると目は細く口元を弛ませた顔があった。
「俺が死んだら隊長だろ?」
「国民、兵士全員が納得しないでしょう。それにあなたは死なないでしょう。病気になったとしても病原体が先に音を上げます。私が隊長になるわけがありません。」
「そうかねぇ?」
アルフは悩んだようなふりをした。
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