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月が照らし出す深夜。城には人の気配がない。もうほとんどの者が眠りについている…
はずなのだが…
「…来る」
寝台で横になっていた紅妖が何者かの気配を悟ってすぐさま起きた。
「順調なようで、安心しました。紅妖。」
どこからともなく現れたのは、仙人・花弥。紅妖に『仁の世を…』と、使命を唱えた者。
「はっ!この紅が必ず仁の世を天に導いてみせます!」
両手を合わせ深々と頭を下げる紅妖。
「それにしても、董卓には呆れますね。酒池肉林などと…馬鹿げている。そんなもの一時の事。」
「董卓など、我が眼中にありませぬ。あるのは…」
「曹操…そして、孫堅か。」
先を読んだような会話が続く。
「はい、あの者達は危のうございます。仁の妨げになること、違いありません。」
「そう感じるか…ならば、排除しなくては…な?」
「はい。」
すると、花弥の目つきが変わった。
「迷い蝶が一匹…」
「な!?」
すぐさま振り向くと、柱の影からチョウ蝉が現れた。そして、花弥はいなくなっていた。
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