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「ここまで来れば…大丈夫かな…」
馬から降り、林の中へ隠れるように逃げていた…その時!
シュッ!―
矢が目の前を通り過ぎた。飛んできた方を見ると…
「そのように睨むな。お主…何者だ?」
曹操だ。今の矢は夏候淵が放ったものだったのだ。
「我が名は紅妖。どの軍にも属しておらぬただの放浪者だ。あなたこそ…奸雄と名高き曹孟徳殿ではないのか?」
「…だとしたらなんだ?」
「あなたが作り出す世は仁の世か、悪政か…それが知りたい」
紅妖には分かっていた。曹操は決して仁の世を作ろうとはしない。悪政なのだと。それでも敢えて聞いたのは、少しでも仁の世に興味を持たせるため。
「紅妖といったか…」
曹操が近づいた。
「わしと共に来るがいい。その答え、わしが見せてやろう」
「…はい」
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