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本田秋男
二十歳、フリーター。ファッションや世の中の流行りものに全く興味がない。楽しいものなど そんなにない。バイトして、今日を生きてる。…それが俺だ。
今日もバイトだ。ドアを開ければ外は薄暗い。
本田は独り暮らしをしているアパートの階段を降りた。自分の吐く息が白い。身体も肌寒かった。もう紅葉の季節も終わる。細い静かな道路には落ち葉が散らかっていた。
(もっと着込んでくるべきだったな。)と本田は思ったが、もうバイト先まで歩き始めてるし 戻ってる余裕もない。
“時間に余裕をもって行動しろ!”これが店長の口癖だ。遅刻したらウルサイ。本田は心なしか早足になった。
あぁ、面倒だ。何かに追われる生活。誰かに気を使う生活。孤独だ。
そんなことを考えながら歩く。
もちろん本田には彼女はいない。夢があるわけでもない。その日暮らしな訳だ。
斜め下を見ながら歩いていると背中がライトで照らされたのが分かった。
(車か?。いや細い道だしバイクかな。)そんなことを思った。
ライトでできた自分の影が大きくなる。本田は振り向いた、瞬間
ドン!
視界は一瞬、バイクを映し、直後 夜空を映した。バイクに跳ねられた本田は、衝撃で宙を舞い 頭からアスファルトの地面に着地する。
身体中が痛い。鼓動が高鳴る。血が、騒ぐ。
「大丈夫ですか!?」
バイクの運転手らしき野郎が本田の視界に入ってきた。茶髪でチャラチャラしてそうな、ムカつく野郎だった。
「大丈夫なわけねぇだろ!!。何キロで走ってんだ、馬鹿!!」
本田は そう言いたかった。だが、口が動かない。息しかできない。視界が白くなる。自分の息かと思ったが違うらしい。それに身体は痛くなくなってきた。なんだか暖かくて気持ちがいい…。
本田は目を閉じた。
本田は死んだ。
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