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「…わかった受け入れる」
本田は納得いかない表情で答えた。そして新たな疑問が生まれる。このジジイは何者なのか。
悟ったようにジジイは話しかけてきた。
『俺ぁ、死の指導員の夢瑞健次(ゆめみずけんじ)という名だ。お前、本田の情報は全て入っている』
「…死神か?」
『あぁ?。そんな偉いもんじゃねぇよ。さぁ、行くぞ』
本田は手を取られた。
(…そんな偉いもんじゃない、か。この夢瑞っていう爺さん、読めねぇ奴だ。明らかに不思議な力を持っている。一見、70代の紳士的な老人に見えるが…)
そんなことを思っていた。
徐々に 見慣れた町の景色が薄れていく。
(あそこのタコヤキ屋、美味かったよなぁ)
そんなことを考えていた。
そんな本田に気が付いたのか、
『なんだ?。未練があるのか?』
と夢瑞は聞いてきた。
本田は面倒だったので
「別に」
とだけ答えた。
いつもの町は完全に消え、知らない町が姿を表した。巨大なビルの入り口の前に到着していた。
「おい夢瑞…。ここが天界です、ってか?」
『ああ』
「ジジイ!!この野郎!」
『黙れ!』
「ぐへ。」
急に本田はミゾオチにパンチが入った感覚に襲われた。
『ここは、天界だ。ここにはここのルールがある。ここに来た以上、従ってもらうぞ。ここには閻魔様という御方がいる。まぁ…人間界でいう“裁判の判決を下す”御方だ』
「…。」
本田は痛くて喋れない。それをいいことに夢瑞は続けた。
『閻魔様は俺の上司に当たる。くれぐれも失礼の無いようにな。』夢瑞は声にドスを聞かせて本田に念を押した。
「わぁったよ。」
苦し紛れに本田は答えた。
ここが天界、か。辺りを見渡せば、場所は知らないけど 今まで生活してきた町並みと変わらない。ただ目の前にある超高層ビルで都会に見えてしまうのだが。
『さぁ入るぞ。こい』
夢瑞が促す。
「待てよ、どこに行くんだ?」
『…空気の読めない奴だな。KYか?』
(ジジイ…。)
本田は怒りに震えたが、我慢した。
『挨拶に行くんだよ、閻魔様にな。それでお前の今後が決まる』
「なんだと!?」
この夢瑞が“様”呼ばわりしている閻魔ってやつは 相当やばいやつだという事を認めざるを得なかった。
『さぁ入るぞ』
高層ビルの入り口の自動ドアが開き、夢瑞は入っていった。本田も後ろから付いていった。
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