第一章 再会

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金曜の夜だけあって店の中はほぼ満席状態で賑やかな雰囲気に包まれていた。 隣の席から 「よぉ、久しぶり」 とガタイのいい男が話しかけてきた。俺は会社の中とはまったく違うキャラを持ち出し、相手に笑顔で返す。 会話といえば特にたわいもないこと。仕事の事などは話さない…この世界の暗黙の了解なのだろう。そんな気を遣わなくていいこの空間が俺はとても気に入っている。 時を忘れマスターやお仲間達と楽しい一時を過ごす。会話は男の話か自分のお気に入りの芸能人の話。自分にとってはどうでもいい話が、なぜかここでは心地よい気分になれるのだった。 決して飲み過ぎる自分ではないが、今日はいつもより酒がすすんで酔っ払う程度になっていた。客も疎らになり帰ろうかな、と思ったその時だった。
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