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…どのくらい歩いたのだろう。
何もかもが無のままひたすらに歩き続ける。
ふと平泳ぎをしていた両腕を止め立ち止まる。
後ろを振り返ると歩いた:形跡:が真っすぐに永遠と続いている。
これだけ進んでも辺りの景色は全く変わらない。
空だけが太陽から月へと入れ変わっていく。
辺りが薄暗くなるにつれ、生への希望も薄れてゆく
愕然とし、その場に座り込む。この状況を夢だと思いたいが現実だ
心臓が生々しく鼓動をしている、平泳ぎで草を掻き分けてきた手の平が切り傷だらけで痛む。
夢ではない。
ここは地獄なのか?
もうこの現実は、まさに地獄だ。生が辛い…いっそうの事、死んでしまいたい…だが死ぬ手立てがない…飢え死ぬ他無い。
もう失う物がない今どんな死に方だろうと恐くない…。
死を目前に両手で頭をかかえ髪の毛を引っ掻き回し鷲掴む!!
「なんでこんな事になったんだ…」
悔やむに悔やめない
胸に込み上げてくる絶頂な程の切なさ、寂しさ、憤りで涙があふれ出てくる
今や意味の持たない視界を遮る程の涙
それを無意識に洋服の袖で拭う
いままで気にも止めなかった袖を見つめる 改めて自分の姿を見る
草で汚れ傷だらけの指で必死に涙を拭い視界を得る
もう既に辺りは暗く月の明かりしか無い為、色は判らないものの礼服を着ている…左腕にはデジタル式の腕時計を付けている 左腕を月灯にかざし液晶盤を見てみるが壊れているのか何も表示されていない。上着、シャツ、ズボンのポケット全てに手を入れ探ってみる…何も無い。
記憶の糸を掴めぬまま意識が遠退いていく 辛うじて起こしていた上半身も ゆっくり地面へと近付き崩れていく…また草に覆われていく…草達は歓迎するかのようにざわめいている…草達の心地良い子守唄のなか心臓の鼓動が眠ろうとしている
これが死か…
どこか懐かしく気持ちいい
目を閉じ ゆっくり呼吸が少なくなる…。
終れるんだ………
?
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