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個
交わらないきみとぼく
重ならない私とあなた
すべての細胞を
すべての元素を分類した人たち
彼らは
個であるという孤独に耐えられる自信を有するのか
その存在たちに自己の存在に
不安という揺らぎはないのか。
誰かが車から捨てた吸い殻が、顔に火傷を作った。
弱った夜には大事な人達との隔たりに涙する。
すべてがはじめからひとつなら、こんな事もなかっただろう。
それでも
私は私という個であることに
他は他という個達であることに
感謝したい。
不意に述べられたひとの手が傷跡に温かくて。
錯覚でもいい。
私に向く他の心がある。それに温かさを感じる。
それは錯覚でもいい。
きっとそれを願って最初の個は海に生まれ陸に上がった。
孤独や痛みを覚えるほどに枝分かれしていった。
きっとわたしたちは
溶け合うよりも、
溶け合う錯覚の方が幸福を感じられる。
愛すべき複数の個の世界。
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