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「鉄っ……あなただけは、必ず生き残るのよっ」
最後に聞いた最愛の人の言葉が、頭をよぎる。
悲しみに歪んだ鉄の表情は瞼を細め、溢れた熱い雫は零れ落ちた。
「わりぃー晶子。それは、出来そうもない……」
独り言の後トレンチコートをめると鉄の腰から革製のバックルと、鈍い光りを放つそれが剥き出しになる。
カチッ
そのナイフを手に取り自分自身の腹部に突き立てた鉄は、その刃を内臓までグイグイと押し込んでいく。
「ぐはぁっ」
青ざめる顔、唇からは叫び声と共に吐血が漏れる。
「……ちく……しょうっ!!!」
……その時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴォッ
「っ……」
西の空 それがなんなのか?
夕焼けの逆光ではっきりとは解らなかったのだが
回転翼が風を切り裂く音が、うすれゆく意識の中で鳴り響いていたんだ。
人類滅亡まで
残り
―1年と6ヶ月―
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