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河島の言葉に眉をしかめた。
言っている意味がわからない。
「…道具に言わされたも同然だろうが」
「……河島?」
薬を使ったのは、乱れた河島が見たいという想いともう一つ。
そうなった時、全てを薬や僕のせいに出来ると思ったからだ。
プライドの高い彼はきっと行為の間、組み敷かれ一方的に快楽を与え続けられることは屈辱に等しいだろう。
だから、責任を押し付けるモノがあれば彼がそのことに苛まれる心配はない。そう思ってのことだったのに。
河島は違ったのだろうか。玩具や薬のせいでああなったのならば、それ等のせいに出来る。
河島もそうすると思って決め付けていたが、もしかして。
「ああなったのが道具のせいなのが、嫌だった…?」
「当たり前だ…ッ」
僕じゃなく道具に乱されることが嫌だった、そう考えてもいいのだろうか。
勝手な解釈かもしれない。
口にしてしまえば、そんなわけがないだろうと笑われるかもしれない。
でも、確認せずにはいられなかった。
「僕じゃないと、嫌?」
行為の最中も似たような事を聞いたような気がするけど、もう一度。もう一度だけ。
その口で、その声で、河島だけの言葉で聞かせて。
「…ッ、他の奴にこんなことさせるか…っ」
思わず目の前の身体を抱き締めていた。
拒もうとする腕を捕らえ、悪態ばかり吐く口は唇で塞いで。
好き、なんて。
言葉にしてしまえばたった二文字の想いを伝えた。
誰にも渡さない。
決して、離さない。
この身体も、心も、声も、言葉も、全部。
君の全ては僕のモノ。
-end-
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