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「ん、ぁ…」
彼が悩ましく眉をしかめたことが嬉しくて、サイドテーブル代りにしている棚の上に置いてある小さなチューブを手に取った。
潤滑剤が入っているそれはいつも使うものの四分の一程の大きさで、多分一回分には多くても二回分にはならないだろう。試供品として渡されたものであるから当たり前だ。
蓋を開けて中身を指に出し、後孔へ液体でも固体でもないものを塗った。
「ぁ、ゃめ…っ」
やめさせようとして腕を掴んでも、やめる気なんて毛頭ない。
いつもと違って愛撫を行わずに手を伸ばしたせいで不安なのか、河島の戸惑った瞳と目が合う。
それは大抵すぐに逸らされてしまうけど。
この目が好きだった。
僕以外の誰にも見せることのない表情。
彼がこの瞳を、この顔をしてくれるのは、自分だけのものになってくれるのは、行為の間だけだから。
「大丈夫」
安心させるために口付けを落として、そっと蕾に触れる。
入口に塗り付けた冷たい感触に、河島が腰を引くが押さえて指を少しずつ入れる。
最初は慣らすように、ほぐすように、薬品をたっぷりと塗り付けていく。
「…ん、ぁ…っ」
殆ど触れていない河島の自身は勃ち上がり、先走りを零している。
蜂蜜色の肌は既に赤みを帯びていた。
まだ最初の戯れ程度しか触れていないというのに感じてしまっていることに、河島がなんで、と小さく声を漏らす。
「これ。この、潤滑剤な、少量のセックスドラッグが混じってるんだよ」
「……?」
「所謂、媚薬入り」
「な…っ、ふざけるなッ」
「ふざけてないよ」
勃ち上がっている河島自身を、軽く指でなぞった。
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