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素直に言ってくれないとわからない。わからないんだよ。河島も、僕だけを欲しがってくれているの。そう思ってもいいのか、違うのか、わからないんだ。
「好いてくれてる?」
「だから…っ」
「河島の言葉で聞かせて。それが出来ないなら……キスして」
彼が目を見開いたのがわかった。
今まで河島は自分から行動を起こそうとはしなかった。いつも受け身でいた。だから今日は、河島から。
「ふざけるな…ッ、なんで俺から…」
「そろそろ限界なんじゃないの?いきたいなら、河島」
触れるか触れないかの位置で身体のラインをなぞると河島が逃れるように捩った。
先程塗り込んだジェルのせいで、河島は冷めない熱と僅かな衣擦れにさえ感じているのはわかっているからこそ、確信がある。
河島がどんな形であれ想いを伝えてくれることに、期待した。
縛ったままにしてある河島の自身に触れて煽る。
「ぁ…っ触るな」
「嘘つき」
どれだけ時間が経ったのだろうか。もしかしたら数字で表してしまえば長い時ではなかったのかもしれない。
しかし、藤見にも河島にもとてつもなく長い時間に感じた。
不意に、河島が手を伸ばし、長い腕を首に巻き付け引き寄せる。
情欲に濡れた熱とふわりと香る髪の匂いに、少しずつ、だが確かに満たされていく。
彼が誰にだってこうする男じゃないことくらい、わかっている。だからこそ、この行為が特別だと感じることが出来た。
欲しかったのは、これだ。
別にそれは口付けや言葉じゃなくたって良かった。むしろ、言葉だったらこんなにも満たされていくことはなかったかもしれない。河島の言葉だとしても、それは強要して出た言葉だ。自然に出たわけではない。
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