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「…………。
(帝先輩……緋月先輩……そういうのはせめて聞こえない所で……)」
おそらくわざとなのだろう、二人の会話は保健室までつつぬけであった。
神威の顔は僅かに引き攣(つ)り、静かな怒りが立ち込めているのがわかる。
それに気づいた葵は、なんとかフォローしようとするが……
「……えっと……あっ、あんなこと言ってるけど二人とも本当は優しいし、きっと大丈夫だよ!!」
「(……それはたぶん……お前に対してだけだ……)」
そんな葵を神威はジッと見据え、心の中で呟いた。
「……神威……?」
無言のままの神威に、葵は恐る恐る声をかける。
変なことをいってしまったのかと、眉は心配そうに下げられていた。
今だにベッドに腰掛けているために、それは自然と上目遣いになるわけで……
「……葵……」
「ん?」
ワシャワシャ…
「わぁッ!!!!
ちょっ神威やめてよぉ!!」
神威は照れ隠し半分で、葵の頭を少し乱暴めに掻き回す。
「もぉッ、髪がボサボサんなっちゃうじゃないか」
葵はやめさせようともがくが、一向に効果はなかった。
「……そんな顔……他ではするなよ……」
小さく呟く神威の顔はほのかに赤い。
だが
「へ?何か言った?」
「……いや」
ワシャワシャワシャ…
「うわぁッ!!!!」
必死になっている葵には、そんな呟きを聞くことは出来なかった。
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