大嫌いな父との別れ

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黒屡はベッドから飛び起きた。 額から汗が吹き出ている。 恐ろしい夢だった。 最近何度も同じ夢を、まったく同じシーンを見ている。 それは、もしかしたら自分の迷いのせいかのかもしれない。 「寝過ごした……。さっさと起きねぇと……」 着替えようとすると、庭の方から悲鳴じみた声が聞こえた。 それにため息をつく。 声の主はきっと、夢に出てきた見習い執事だろう。 黒屡は上着を羽織ると、思い切り窓を開けた。 見えてくるのはメイドに三つ編されている 情けない執事の姿。 「氷!お前なにやってるんだよ?」 「黒屡さん……!おはようございます。」 何があっても第一声はおはようございます。 それが彼の精神だった。 しかし、すぐに顔が情けなくなり、瞳が潤んでくる。 それに黒屡は深い深いため息をついた。 「で、どうしたんだ?」 「それが……」 「ご主人様、私たち、この子で三つ編していたんです。」 メイドの一人が元気な声で放つ。 それにあきれながら、早く放してやれと注意はした。 ここからは、彼女らが決めること。 ちゃんとしているので、 滅多に命令違反をすることはない。 滅多に、だ。 結局黒屡の部屋にやってきたのは、 三つ編にメイド服を着せられた執事だった。
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